観音菩薩

仏教における菩薩(Bodhisattva)の一尊。サンスクリットでいうアヴァローキテーシュヴァラ(Avalokiteshvara, Avalokiteśvara)が意味により漢訳されたもの。より正しくは「観自在菩薩(かんじざいぼさつ)」ないし「観世音菩薩(かんぜおんぼさつ)」と称する。サンスクリットの「avalokiteśvara」は「自在に観察する」という意味であるが、写本の中には「avalokitasvara」という綴りもありこれは「音を観察する」と訳せる。結果「観自在」「観世音」という2種類の漢訳が用いられるようになった。他には「観音薩埵(かんのんさった)」、「光世音菩薩(こうぜおんぼさつ)」、「観音大士(かんのんだいし)」などの名でも呼ばれる。二世紀に漢訳された経典にすでに「観音」の名が見えるため、インドでもそれ以前から信仰されていたことがわかる。インドにおいて仏教が密教的傾向を強めるとともに十一面観音(Ekādaśamukhāvalokiteśvara)、千手観音(Sahasrabhuja)、馬頭観音(Hayagrīva)と言った変化観音(へんげかんのん)が生まれるに至り、これらの変化観音と区別するために本来の観音菩薩(Avalokiteśvara)を「アーリアーヴァローキテーシュヴァラ(Āryāvalokiteśvara)=聖観音(しょうかんのん)」と呼ぶようになった。勢至菩薩(Mahā-sthāma-prāpta)とともに阿弥陀如来(Amitāyus, Amitābha)の脇侍とされ、普通は華冠や掌上に阿弥陀如来の化仏(本地仏を表す小さな像)を持つ。インドでは美男子としてあらわされるが、日本では女性の像として表される。インドに起源をもつ六観音や、中国由来の変化観音を多く含む三十三観音などが存在する。 「妙法蓮華経」の「普門品」に依れば、観音菩薩(Avalokiteśvara)は相手や場所に応じて三十三種の姿に変わり人々を救済するとされ、これを「三十三応現身(さんじゅうさんおうげんしん)」、「三十三応身(さじゅうさんおうじん)」などと呼ぶ。これに由来して(西国三十三所などに見られるように)三十三ヶ所の霊場を巡礼し救いを得ようとする参拝形式や三十三種の変化観音をこれに当てはめようとする三十三観音のような考え方が生まれた。真言は「南麼三曼多勃馱喃娑(なうまくさまんだぼだなんさ)」(観自在真言・T0848)、「曩莫三滿多沒馱喃娑薩嚩怛他蘖多嚩路吉多羯嚕儜麼野囉囉囉吽」(観自在菩薩真言・T0852)。 觀世音菩薩 1804 藤原行秀 写 「十王寫(じゅうおううつし)」より 国立国会図書館蔵 Copyright: public domain 十王図の第八幅に平等王の本地として描かれたもの。

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