アイヌ民族において、動植物や自然現象などの人間以外のあらゆる自然現象を擬人化した超自然的存在。言い換えればアイヌ(人間)を除いた世界の構成要素。鹿を狩るための毒(トリカブト)が自然界に存在すること、弓をこしらえられるよくしなる木が自然界に存在すること、大きく強いクマが自然界に存在すること、といった人間が持たない自然界の不思議や脅威にカムイは想定される。アイヌにとってカムイは人間と同じように文化をもつ対等の隣人であり、アイヌとカムイは互いに神秘的な存在である。 カムイは山奥や天上にあるカムイモシリというカムイの世界に住んでいて、そこではカムイ達は「カムイネ」と呼ばれる人間と変わらない姿で暮らしている。カムイ達はアイヌモシリ(人間界)に降りてくるときだけ、クマのカムイであればクマの衣装を、タヌキ(ムジナ)のカムイであればタヌキの衣装を着る。カムイモシリに戻るときはこれらの衣装を脱がなければならない。そしてその衣装や仮面を自分で脱ぐのは難しいため、これをアイヌが脱がせるのを手伝う。つまり、皮や肉(衣装)をはいでカムイ達を身軽にする。カムイたちは不死だと考えられており、狩りは人間界に降りてきたカムイ達を彼らの世界に帰りやすくする、ギブアンドテイクの行為だと考えられた。ただし、彼らが人間界に置いていく衣装(皮や肉)はカムイからアイヌへの贈り物であり、これに対してアイヌは礼儀を尽くさねばならない。正しい儀礼とともに行われる屠殺だけが許されると考えられた。
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