マヤ神話において世界を照らし出す太陽を神格化した高位の神。名前は「イツァム(イグアナ)」+「ナー(家)」、つまり「イグアナの家」を意味する。イグアナはおそらく世界全体を示し、イツァムナは世界という器そのものと認識されていたことが窺える。至高の神フナブ・クー(Hunab Ku)の息子であるとされ、時にアステカのケツァルコアトル(Quetzalcoatl)と同一視される。人間に直接干渉しないフナブ・クーよりも広く信仰され、事実上の最高神とされていた。天界及び昼と夜の支配者であり、その光はあまねく世界中を満たし、全ての生物に命を与えるという。また人間にカカオやゴム、トウモロコシなどの栽培を教えた文化英雄神だともされる。名前のとおり巨大な双頭のイグアナないし蛇の姿で表されるほか、歯が抜け落ち頬がこけ、長い鼻を持ち、多くは双頭の蛇などを持った、威厳と優しさを備えた老人の姿でもあらわされた。「アハウリル(ahaulil)=王」という称号を与えられ、玉座に座り下位の神々に君臨する王として描かれる。また、後古典期では最初の神官、「記述の発明者」とされる。書物、治療、医術などを司る。イシュチェル(Ixchel)、もしくはイシュ・チャベル・ヤシュ(Ix-chebel-yax)を配偶神とする。
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