ヒンドゥー教聖典「リグ・ヴェーダ」賛歌の全体の4分の1を占め、ヴェーダ神話の主役ともいえる雷霆、戦争を司る神。妻はシャチー(Śacī)、子はジャヤンタである。戦車で空中を疾駆、猛威をふるう軍神。全身茶褐色(もしくは赤色、金色)で「太陽そのもの」とされるほど巨大な体を持ち、名馬ハリのひく戦車で天空を駆けめぐる。彼は神酒ソーマ(Soma)によって勇気をやしない、力の象徴であるバジュラ(金剛杵)で敵を粉砕する。そのためソーマ(Soma)はインドラ(Indra)の発揮する特別な力の源だと考えられた。しかし、信者に対しては非常な恩恵を与える反面、神酒ソーマ(Soma)を痛飲し、ウシャス(Ushas, Uṣas)の車を破壊したり、スーリヤ(Surya, Sūrya)の車輪を奪ったりして、神界の平和を破る厄介ものでもあった。彼は無数の人間や悪鬼を征服し、太陽にうちかち、蛇形の悪魔ヴリトラ(Vritra)を退治して、それがせき止めていた水を放出し(そのため「ヴリトラハン(Vritrahan=ヴリトラの殺戮者の意)」という異名を持っている)、捕らえられていた牛の群れを解放した(夜明けの象徴とされる)。また後世に至っては戦争において勇敢な死を遂げた戦士たちにアプサラス(Apsaras)を遣わし、天界へ賓客とし迎え、その行為をたたえるという。この逸話は北欧神話におけるオーディン(Ōðinn, Odin)とヴァルキューリ(Valkyrja)に類似しているため、よく比較される。ある伝承ではインドラ(Indra)は天と地から生まれたが、その二つを引き離し、それまでの宇宙秩序を打ち破って新しい秩序をもたらした神とされる。他にパーカシャーサナ(Pākaśāsana=パーカ(ダイティヤ(Daitya, Daiteya)の一人)を調伏する者)という異称もある。 仏教に入って仏法を守護する帝釈天(Śakra-devānam-indra)に帰化する。
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