日本民俗信仰における稲作の神。「稲荷(いなり)」、「お稲荷さん」、「稲荷大明神(いなりだいみょうじん)」、「翁神(おきながみ)」など、多くの名称で呼ばれる。元々は山城国一帯に住んでいた渡来系の豪族、秦氏の氏神で、和銅四年(711年)に稲荷山三ヶ峰に稲荷神が鎮座した、とある(伏見稲荷大社社伝より)。秦氏の勢力拡大と共に稲荷神の信仰圏も拡大し、その過程で古くからの穀霊神であった宇迦之御魂神と同一視されるようになったと思われる。現在では稲荷社の祭神は一般的に宇迦之御魂神とされる。豊受大神や保食神や大宜都比売を祭神とする場合もあるが、いずれにしてもこれらの神は宇迦之御魂神と同一視される。 「いなり」とは「稲生り」を意味し、百穀の首座にある稲を守護し、また全ての穀物を守護する。近世以降は家業の守り神として町内や邸内に祀るようになった。稲荷の使いがキツネとされる根拠には幾つか説があり、キツネを田の神と考える俗信から野狐信仰と結びついたとする説、宇迦之御魂神の別名「御饌津神(みけつがみ)」を「三狐神」として(狐はケツとも読む)狐が使いとされるようになった、などの説がある。同じく狐を使いとする荼枳尼天(Ḍākiṇī)と混同・同一視される。
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