密教における菩薩(Bodhisattva)ないし明王(Vidyārāja)の一尊。サンスクリット名を「クローダチャンドラティラカ(Krodhacandratilaka)」といい、クローダは「怒り」、チャンドラは「月」、ティラカは「そばかす(や発疹)」といった意味があるため「忿怒月黶菩薩(Krodhacandratilaka)」、あるいは「月黶忿怒菩薩(がってんふんぬぼさつ)」と称される("黶"はあざやほくろといった皮膚の変色した部分を指す)。また「金剛月黶(こんごうがってん)」、「月黶尊(がってんそん)」、「忿怒月黶尊(ふんぬがってんそん)」、「忿怒降三世菩薩(ふんぬごうざんぜぼさつ)」などの名前でも呼ばれ、音写では「句路駄賛捺羅底羅迦(くろださんだらていらか)」と記される。降三世明王(Trailokyavijaya)の異名別体の一つであり、胎蔵界曼荼羅金剛手院中の第一列(むかって左側)東方(上方)より第七位に配される。金剛手院全体の教令輪身にあたり、あらゆる障害を鎮め悪事を行う者らを降伏させる仏尊だとされる。種字は「ह्रीः(hrīḥ)」、「ह्रीं(hrīṃ)」、密号は「底羅金剛(ていらこんごう)」、「底利金剛(ていりこんごう)」、三昧耶形は三鈷戟、独鈷戟。 忿怒月黶菩薩 望月信亨 編 「仏教大辞典 第5」より 国立国会図書館蔵 Copyright: public domain 胎蔵界曼荼羅金剛手院における図像。黒肉色の身色で三目四牙四臂の極大忿怒相を表し、左右の第二手で契印を結び、左第一手で一鈷金剛杵、右第一手で鉾鑞を持つ。
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