密教における菩薩(Bodhisattva)の一尊で、普賢菩薩(Samantabhadra)の延命の徳を一つの仏尊として展開したもの。サンスクリット名を「ヴァジュラーモーガサマヤサットヴァ(Vajrāmoghasamayasattva)」、あるいは「マハーシュカーモーガヴァジュラタットヴァ(Mahāsukhāmoghavajratatva)」といい、音写で「縛日羅母伽三昧耶薩怛嚩(ばじらもかさんまいやさとば)」、また意味訳で「大安楽不空真実菩薩(だいあんらくふくうしんじつぼさつ)」、「大安楽真実菩薩(だいあんらくしんじつぼさつ)」、「大安楽不空菩薩(だいあんらくふくうぼさつ)」、「大安楽不空金剛三昧真実菩薩(だいあんらくふくうこんごうさんまいしんじつぼさつ)」などの名でも呼ばれる。増益延命を修する普賢延命法の本尊であり、また胎蔵界曼荼羅の遍知院の南端(右側)に配される。その尊容は金色の身色で五智宝冠を頂く二十臂像で、十六大菩薩と四攝菩薩の三昧耶形を持物と蓮華座に坐す。すなわち右手に五鈷杵(金剛薩埵(Vajrasattva))、五鈷鉤(金剛王菩薩(Vajrarāja))、箭(金剛愛菩薩(Vajrarāga))、弾指(金剛喜菩薩(Vajrasādhu))、三弁宝珠(金剛宝菩薩(Vajraratna))、日輪(金剛光菩薩(Vajratejas))、如意幢(金剛幢菩薩(Vajraketu))、二つの三鈷杵(金剛笑菩薩(Vajrahāsa))、金剛鉤(金剛鉤菩薩(Vajrāṅkuśa))、金剛索(金剛索菩薩(Vajrapāśa))、左手に蓮華(金剛法菩薩(Vajradharma))、利剣(金剛利菩薩(Vajratīkṣṇa))、八輻輪(金剛因菩薩(Vajrahetu))、舌中三鈷杵(金剛語菩薩(Vajrabhāṣa))、十字羯磨(金剛業菩薩(Vajrakarma))、鑿上三鈷杵(金剛護菩薩(Vajrarakṣa))、二つの利剣(金剛牙菩薩(Vajradaṃṣṭra, Vajrayakṣa))、金剛拳(金剛拳菩薩(Vajrasandhi, Vajramuṣṭi))、金剛鏁(金剛鎖菩薩(Vajrasphoṭa, Vajraśṛṅkhalā))、金剛鈴(金剛鈴菩薩(Vajraghaṇṭā, Vajrāveśa))を持する。また延命法の本尊としては二臂の満月童子形で五仏冠を頂き、右手に金剛杵、左手に金剛鈴に持ち千葉蓮華座に坐す。また蓮華座を三首一身それぞれ六牙で独鈷杵を鼻で巻いた象(白象王)が支え、さらにこれを五千の象が支え四天王(Cātur-mahā-rāja-kāyika)が侍る姿で表される。 密号は「真実金剛(しんじつこんごう)」、種字は「(yu)」、「(yuḥ)」、「अः(aḥ)」、「हूं(hūṃ)」、三昧耶形は甲冑、五鈷杵、印相は両手を金剛拳にし人差し指を鉤にして互いに組んだもの、真言は「唵縛曰羅喩勢娑縛訶(おんばさらゆせいそわか)」(延命真言・T2485)。
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