ハトホル

エジプトにおける豊穣の女神で"レー(Re)の娘"の一人。レー(Re)の娘にして妻、或いはホルス(Horus)の妻で安産、子孫繁栄を司る。エジプト各地で独自に信仰されていた「牝牛の女神」が融合した神で、角の間に太陽を表す円盤を持った牡牛、或いは太陽円盤をつけた牝牛の角を持つ神として描かれる。オシリス(Osiris)の神話上では非常に影の薄い存在で、義母にあたるイシス(Isis)はホルス(Horus)のために果敢に戦うが、ハトホル(Hathor)はひたすら夫の無事を祈り、家を護る存在として語られている。しかし別の伝説では、人間が自分に対して陰謀をめぐらしていると思い込んだ、もうろくしたレー(Re)によって、人間を虐殺する為にハトホル(Hathor)が派遣されたとされる。彼女は虐殺を嫌い、血の色に似せたザクロの果汁を混ぜたビールで地上を浸し、その水鏡に写る自分の姿に恍惚となり酔ってしまったため、人間は生き長らえたという。別の伝承ではハトホル(Hathor)は雌ライオンの神セクメト(Sekmet, Sekhmet)に姿を変え邪悪な人間を殺しまわって辺りを血の海にしたがそれでも止まらず、やり過ぎを心配したレー(Re)によってザクロ入りのビールが撒かれたとされる。このビールを飲んだハトホル(Hathor)=セクメト(Sekmet, Sekhmet)はすっかり酔っ払って元の姿に戻ったという。これに因んで毎年行われたハトホル(Hathor)の祭ではザクロ入りのビールが振舞われていた。

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