月天

インド神話の月の神チャンドラ(Chandra, Candra)(Candra)が仏教に取り込まれたもの。「月天子(がってんし)」、「月宮天子(がっぐうてんし)」、「月光天子(がっこうてんし)」とも呼ばれる。また音訳では「戦捺羅(せんだら)」、「旃陀羅(せんだら)」、「戦達羅(せんだら)」と呼ばれる。ほかにもチャンドラ(Chandra, Candra)の別称である「ニシャーカラ(Niśākara)="夜の作り手"の意」から「創夜神(そうやじん)」、「クムダパティ(Kumudapati)="蓮の主"」から「蓮華王(れんげおう)」、「シュヴェータ・ヴァージン(Śveta-vājin)="白馬"の意」から「白馬主(はくばしゅ)」、「シータ・マリーチ(Śīta-marīci)="冷たい光線"の意」から「冷光神(りょうこうじん)」、「ムリガーンカ(Mṛgāṅka)="鹿の印"の意」から「鹿形神(ろくぎょうじん)」、「シャシ(Śaśi)="野兎のような"の意」から「野兔形神(やとぎょうじん)」、月や夜を意味する「インドゥ(Indu)」の音写で「印度(いんど)」、星宿(→二十八宿(Aṣṭāviṃśati nakṣatrāṇi))を統べる者としての名である「ナクシャトラ・ナータ(Nakṣatra-nātha)="星の支配者"の意」ないし「ナクシャトラ・ラージャ(Nakṣatra-rāja)」の意味訳から「星宿王(しょうしゅくおう)」など、数多くの別名をもつ。ただし「月天子」などの名称は「ソーマ(Soma)(Soma)」=「蘇摩(そま)」の意味訳で別体であり、月曜(Candra, Soma)を指すとも言われる。 十二天の一尊として本地を勢至菩薩(Mahā-sthāma-prāpta)とし月を象徴する。夜を司る神として世間を照らし、法楽(仏法を享受する喜び)を与える仏尊とされる。「長阿含経」などに拠れば、身体から千筋の光を発しており、そのうち500の光は下方へ、もう500の光は横方向へと延びているという。このことから「千光明(せんこうみょう)」、「涼冷光明(りょうりょうこうみょう)」などの異名も持つ。胎蔵界曼荼羅では外金剛部院(最外院)の西方(下部)に「月天妃」とともに、金剛界曼荼羅では南方(左側)に描かれる。 種字は「चं(caṃ)」(胎蔵界)、「प्र(pra)」(金剛界)、印相は蓮華印や梵天印、真言は「唵戰捺羅野莎呵(おんせんだらやそわか)」、「南莫三曼多沒馱南戦捺羅也娑嚩訶(なもさんまんたぼだなんせんだらやそわか)」、三昧耶形は白瓶(胎蔵界)、半月(金剛界)。 月天 国訳秘密儀軌編纂局 編 「新纂仏像図鑑 天之巻」より 国立国会図書館蔵 Copyright: public domain 月天 国訳秘密儀軌編纂局 編 「新纂仏像図鑑 天之巻」より 国立国会図書館蔵 Copyright: public domain

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