仏教において四方を守護する四天王(Cātur-mahā-rāja-kāyika)の一人であり、北方の守護神。サンスクリット名を「ヴァイシュラヴァナ(Vaiśravaṇa)」という。この名はインド神話に登場するクベーラ(Kubera, Kuvera)の別称であり「ヴァイシュラヴァスの息子」という意味を持つが、「ヴァイシュラヴァナ」という言葉自体が「良く聞きうる」という意味にも取れることから、これを漢訳して「多聞天(たもんてん)」や「多聞子(たもんし)」、「普聞(ふもん)」、「種種聞(しゅしゅもん)」などと称する。また音写での表記は「毘沙門天」の他に「吠室羅末拏(べいしらまな/べいしらまぬ)」、「毘沙羅門(びしゃらもん)」、「毗沙門(びしゃもん)」、「鞞室羅懣囊(ひしらまんのう)」など。また他に北方を守護することから「北方天(ほっぽうてん)」と呼ばれることもある。 他の四天王(Cātur-mahā-rāja-kāyika)と同じく帝釈天(Śakra-devānam-indra)の眷属であり、十二天や十六善神、二十八部衆の一尊であり、四天王(Cātur-mahā-rāja-kāyika)の中でも特に単独で信仰されることが多い。夜叉(Yakṣa)と羅刹(Rakshasa, Rākṣasa)の頭領とされるほか、八大夜叉大将、二十八使者など多くの眷属を従える。また「槃闍那(Bhuñjati)(はんじゃな)」という名の妾(中阿含經)、「那羅鳩婆(ならくば)=ナラクーヴァラ(Nalakūvara)」という子(佛所行讃)、或いは五太子(毘沙門儀軌)、またあるいは九十一子(大方等大集経)がいるとされる。 須弥山の中腹北方に住んでいるとされ、仏法を護持し財宝と福徳を司る神であり、また戦勝としても信仰された。「多聞」の名前の通り、仏が説法する道場の守護をする神なので誰よりも説法を多く聞いているとされる。一般的にその姿は忿怒形の甲冑姿で、宝棒と宝塔、あるいは宝剣や三叉戟を持つ。胎蔵界曼荼羅でも北方の守護神として外金剛部院(最外院)の北(左)方中央に配される。室町時代以降は七福神の一人としても信仰された。 毘沙門天 国訳秘密儀軌編纂局 編 「新纂仏像図鑑 天之巻」より 国立国会図書館蔵 Copyright: public domain 十二天軌に拠る。金色の身色で甲冑を身に着け左手に塔、右手に宝棒を持ち、二夜叉(Yakṣa)の上に坐す。 毘沙門天 国訳秘密儀軌編纂局 編 「新纂仏像図鑑 天之巻」より 国立国会図書館蔵 Copyright: public domain
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