エジプトにおける民の神。エジプトに存在する多く神がファラオや貴族によって信仰されたのに対し、ベス(Bs)は民間信仰から発祥したと考えられる低位の神であり、悪霊や蛇などから人を守ってくれるとされた。外見的にもエジプトの普通の神のように均整のとれた長身ではなく、三、四頭身ほどの頭でっかちのシルエットで、顔はしわだらけで巻き毛のひげに覆われ、目はぎょろ目、脚は彎曲し短く、裸でライオンの毛皮を背負う。民衆を守護する神であり、魔除けとして多くの日常品にベス(Bs)の姿が彫刻された。彼の持つ二台のリード(楽器)から奏でられる騒々しい音は悪魔を追い払うという。民衆の信仰を一手に担ったベス(Bs)の加護は多岐に渡った。彼は元々戦いを司る神でもあったが、ハトホル(Hathor)と結びつき歓喜や愛を司り、ミン(Min)やタウエレト(Taweret, Taurt)と結びつき生殖や出産を司り、また酩酊の神ともされた。ベス(Bs)は固有の神殿を持たなかったが、末期王朝時代には「ベス(Bs)の部屋」と呼ばれる回春・性欲増強を祈る施設が作られるようになった。またローマ支配時代には軍装をまとった軍神として扱われるようになった。
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