ユダヤ教、キリスト教における魔神ないし堕天使の一人。「旧約聖書」、「新約聖書」に言及されるほか、旧約聖書偽典やグリモアなどにもその名が見える。「ベリル(Belil)」の名で呼ばれる場合もある。かつては力天使で、「Satanel(神の使いの意)」と呼ばれていた。「Belial」の語義は「無価値な者」、「悪なす者」、「卑しい者」、「邪悪な者」という意味があり、旧約聖書の第七「士師記」、第九「サムエル記」などでは人間を形容する言葉として登場しているが、新約聖書「コリントの信徒への手紙」ではキリストに対する悪魔の固有名称として使われている。旧約聖書偽典「ヨベル書」によればノアの数代前に天から降りてきた天使達の長の一人がベリアル(Belial, Beliar, Berial)であり(もう一人はマステマ(Mastema))、人間の女性の色香に惑わされ彼女たちと交わり、巨人族(ネフィリム(Nephilim, Nefilim))を産ませたので、その罪で天に戻れなくなり、堕天使となったという。ときにサタン(Satan)と同一視され、「闇の国の王」と呼ばれるときもあるが、一般的にはサタンに次ぐ地位にある堕天使の一人とされる。 悪魔としてのベリアル(Belial, Beliar, Berial)は、偽り、ねたみ、破壊、患難、捕囚、欠乏、混乱、荒廃などに敏感に反応し、人間を誘惑して堕落の道に引きずり込み、その魂を自分のものとするいう。とくに姦淫、富裕、聖域を汚すことは「ベリアル(Belial, Beliar, Berial)の三つの網」と言われる。堕落しきった(しかし美しい)天使の姿や角のある天使の姿で描写される。そこはかとなく気品の感じられる明朗な声で話し、人間の心の中に罪を芽生えさせ、いたずらを助長し、人が怒るのを見て楽しむ。不誠実で何らかの手段を講じない限り正直にはなすことは無いとされる。また仇敵を親友に変える力を持っているという。 17世紀の魔術書(グリモア)の「レメゲトン」や「偽エノク文書」によればソロモン王に封印された72柱の魔神の一人(→"ソロモンの霊")であり、炎の戦車に引かれた美しい天使の姿で現われ、人間に高い地位を授ける能力を持っているという。またコラン・ド・プランシー著「地獄の辞典」ではベリアル(Belial, Beliar, Berial)を古代フェニキアで崇拝された邪神だとしている。「偉大なる公爵」、「虚偽と詐術の貴公子」、「炎の王」、「敵意の天使」、「隠れたる賄賂と暗殺の魔神」などと称され、トルコの地獄の大使だとされている。 ベリアルのシジル(紋章) 「The lesser key of Solomon, Goetia : the book of evil spirits」より 大英博物館(British Museum)蔵 Copyright : pubric domain
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