エジプト神話に数多く登場する太陽神の一人。二重王冠をかぶりアンクとウアス笏を持った人間の姿、あるいは雄羊の頭部を持つ男性などの姿で表される。原初の混沌の海であるヌン(Nun)から自らを誕生させ、その後神々を生み出したとされる。アトゥム(Atum)は誕生したとき生命と復活の象徴である蛇の姿をとって生まれたが、世界が破滅する時もやはり蛇の姿をとりヌン(Nun)へと還るとされた。アトゥム(Atum)はこうした神々の始祖、創造神としての性格の他に、また太陽神としても信仰もあった。太陽の船によって運航される太陽は、レー(Re)やケペラ(Khepera)、アウフ(Auf)といった様々な姿をとって毎日空を循環しているが、アトゥム(Atum)はその中で沈む太陽の役割を与えられた。これは恐らくアトゥム(Atum)は太陽神の中でも特に古くから信仰されていたことを示すと考えられる。太陽神を象徴するベンベン石は元々彼を象徴するものであり、アトゥム(Atum)はベンベン石の上に立って世界を照らしているとされたが、この役目はレー(Re)やアモン(Amon)にとって変わられるようになった。 アトゥム(Atum)は自らを生み出し、なおかつ一人で神々をも生み出した両性具有の神と考えられていたが、後世に至ると男性神として信仰されるようになり、妻として「イウサーアス(Iusâas)」、「ヘテペト(Hetepet)」といった女神を与えられることとなった。ただし、これらの女神はあくまでもアトゥム(Atum)の一部分、つまりアトゥム(Atum)が自分の手を切り離して女神としたものであり、単一神としては扱われなかった。
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