阿修羅

インド神話における超自然的種族であるアスラ(Asura)、ひいてはゾロアスター教の最高神アフラ・マズダ(Ahura Mazdāh)が仏教に取り込まれもの。ほかに「阿蘇羅(あそら)」(金光明最勝王経など)、「阿素羅(あそら)」(一切経音義など)、「阿修倫(あしゅりん)」(長阿含経など)、「阿素洛(あそら)」(般若経など)などに音写されるほか、略して「修羅(しゅら)」とも呼ばれる。さらにサンスクリット名の「神でないもの」あるいは「整っていない(醜い)もの」を意味訳し「非天(ひてん)」(瑜伽師地論など)、「非類(ひるい)」、「不端正(ふたんせい)」、「酒を飲まない」と解釈して「無酒神(むしゅじん)」(一切経音義など)などとも漢訳する。 「非天」、つまり「天部(→天(Deva, Dēva))にあらざる者」であり、帝釈天(Śakra-devānam-indra)と戦う悪神とされるが、一方で仏法を護る天竜八部の一部を担うともされる。天竜八部のなかでも特に大勢力を有し、須弥山の北にある「阿修羅宮」を住処としている。阿修羅衆を率いる主領は「阿修羅王(あしゅらおう)」と呼ばれ、しばしば固有名を伴い仏典に登場する。例えば「長阿含経」には「羅呵阿須倫王(らかあしゅりんおう)」、「波羅呵阿須倫王(はらかあしゅりんおう)」、「毘摩質多阿須倫王(びましったあしゅりんおう)」、「睒摩羅阿須倫王(せんまらあしゅりんおう)」の四大の阿修羅王が登場するが、このうちの羅呵阿須倫王は羅睺(→羅睺曜(Rāhu))のことでインド神話においてもアスラ(Asura)族とされている(→ラフ)。ほかにも「踊躍阿修羅王(ようやくあしゅらおう)」、「奢婆羅阿修羅王(しゃばらあしゅらおう)」、「陀摩睺阿修羅王(だまごあしゅらおう)」などの名がみえる。 胎蔵界曼荼羅では外金剛部院(最外院)の南方(右側)に二か所に配される。その像容は赤色の身色で忿怒形で甲冑を着け、右手に華棒を持ち左手は腰に当て筵に坐し両脇に使者を従えるもの、および二者がならび慈悲相で右手に剣を持ち坐すもの。そのほかにも様々な異像がみられる。 種字は「अ(a)」、真言は「南麼三曼多勃馱喃囉吒囉吒特?耽沒囉波囉(なうまくさまんだぼだなんらたんらたんとぼうたんばらはら)」(諸阿修羅真言・T0848)、「唵毘摩質多羅阿蘇羅地波多曳莎訶(おんびましたらあそらちはたえいそわか)」。 阿修羅(Asura) 「大正新脩大藏經図像部 第1巻」 「大悲胎藏大曼荼羅 仁和寺版」より 大蔵出版 ©大蔵出版及びSAT大蔵経データベース研究会(Licensed under CC BY-SA 4.0) 胎蔵界曼荼羅外金剛部院の南方(右側)における図像。両脇に使者を従える。 阿修羅(Asura) 「大正新脩大藏經図像部 第1巻」 「大悲胎藏大曼荼羅 仁和寺版」より 大蔵出版 ©大蔵出版及びSAT大蔵経データベース研究会(Licensed under CC BY-SA 4.0) 胎蔵界曼荼羅外金剛部院の南方(右側)南門内における図像。 阿修羅(Asura) 「大正新脩大藏經図像部 第6巻」 高野山光明院蔵「図像法華経法(観音応化身像)」より 大蔵出版 ©大蔵出版及びSAT大蔵経データベース研究会(Licensed under CC BY-SA 4.0)

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