イスラム教以前のアラビアの女神。「エロッザ(エル=オッザ)」とも呼ばれる。またアラビア北部では「ハン=ウッザイ」と呼ぶ。アラビア中央部のベドゥインの諸部族の間では最高神アラー(Allah)の末娘と考えられていた。黒い石が御神体として崇拝され、その表面には「アフロディテの押し跡」と称される印や凹みがああった。アル=ウッザは木の中に住んでいるといわれており、空けの明星が彼女だといわれることもあった。アル=ウッザへの崇拝には生贄が必要であり、人間の生贄も捧げられていたことが明らかになっている。 預言者ムハンマドが属していた部族は特にアル=ウッザを崇拝していて、ムハンマド自身もイスラムの聖なる黒石を、メッカの神殿カーバに安置したといわれている。アル=ウッザの崇拝は女性の神官によって行われ、イスラム教の時代になってもこのようなカーバに仕える神官たちは「おばあさん(アル=ウッザのこと)の子」と呼ばれつづけた。イスラム教の聖典コーランでは、アル=ウッザは「その名は、汝や汝の父祖の呼びなせるものにあらず。ただ憶測と、女神たちの欲するとことに従えるのみ」と述べられている。
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