アポピス

エジプトにおいて、水と土の元素からなると考えられた渾沌と闇の蛇。ネイト(Neith)から生まれたとされる。「アペプ(Apep, Aapep)」、「アポプ(Apop)」、「アポフィス(Apophis)」などとも呼ばれる。宇宙的な大きさを持つ人頭の蛇や爬虫類の姿で描かれる。その体は黄色と黒で染められ、悪、夜、死、闇といった世の中のすべての負性を象徴する。「恐ろしき者」、「危険な者」、「反逆する者」、「招かれざる者」などと呼ばれ恐れられた。 闇と月を象徴するアポピス(Apophis)は、太陽の神アトゥム(Atum)やレー(Re)の敵であり、アポピス(Apophis)が太陽の船を飲み込むと食が起こると信じられていた。元来はセト(Set, Seth)の敵でもあったが、セト(Set, Seth)がオシリス(Osiris)の伝説において悪役とみなされるようになると、アポピス(Apophis)もセト(Set, Seth)の仲間と考えられるようになった。アポピス(Apophis)は原初の水(アビュッソス)から現われた者であり、世界を原初の混沌に引き戻そうという力の顕れと考えられる。アポピス(Apophis)がエジプトの祭儀に登場する時、それは退治すべき邪悪な者として登場する。メンフィスで行われるソカリス(Sekar, Sokar)祭では、王がオシリス(Osiris)の前でアポピス(Apophis)を打ち負かす儀式を行う。別の神殿では、セト(Set, Seth)とその従者を倒す書があり、そこでもアポピス(Apophis)は倒されている。また、このような儀式で行われる教えは、後世になるとあらゆる悪から身を守る呪文のようなものとして使われるようになった。ただし冥界においては、アポピス(Apophis)はオシリス(Osiris)に有罪を宣告された死者達を追いまわし、苦しめる役割を担っている。

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