エジプトにおける冥界神の一人。本来は「インプ(Inpw)」の名で呼ばれた。冥界への門を開き、死者をオシリス(Osiris)の裁きの間へと導く役目を持つ。オシリス(Osiris)とネフティス(Nephthys)の子であるが、本来ネフティス(Nephthys)の夫はセト(Set, Seth)であるのでアヌビス(Anubis)は「不義の子」ということになる。それ故アヌビス(Anubis)は生みの母ネフティス(Nephthys)に捨てられてしまうが、オシリス(Osiris)の妻であるイシス(Isis)に拾われ育てられた。ただしこれは後から出来た神話で、本来は太陽神レー(Re)の四番目の息子とされていた。 元々は単純な冥界神、あるいは冥界の番犬(番人)のような神格だったと思われるが、複雑なエジプトの神話体系に取り込まれることによってその役割も細分化した。マート(Maat)の「真実の羽」と死者の魂を天秤にかけて計量する仕事や死んだファラオのミイラに命を吹き込む仕事はアヌビス(Anubis)の役割とされる。また医学や薬術に長けており、オシリス(Osiris)がセト(Set, Seth)に殺害された時に、その身体に布を巻いてミイラにしたという神話からミイラ作りの神としてミイラ職人に崇拝されていた。また墓地の守護神としても信仰され「聖なる土地の主」と称された。 冥府へ死者を導くことからギリシャのヘルメスと同一視され、「ヘルマヌビス」と呼ばれることああった。黒いジャッカル或いはイヌの頭を乗せた黒っぽい皮膚の男、或いは単純に犬の姿で表される。
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